*死んだらどうなる?
先日、小説を読んでいたら、死後の世界についてチラリと触れている箇所があった。

この世の命が終わったあとには何が起きると思うかと、夫に尋ねたことを思いだした。すると夫は、たぶん、こういうことが起きるにちがいないと生きている間ずっと信じていたとおりのことが起きるだろうと答えた。
(スティーヴン・キング著「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」池田真紀子訳、『幸福の25セント硬貨』〈新潮文庫〉新潮社、平成16年、p.310)

こういう考え方は、スピリチュアル系の本で読んだことがあるように思う。霊界は、思いの世界であって、心に思った通りの世界が展開するとか……。たとえば、死後は、無になると思っていれば、その通りに何も分からない無意識になり、天使のいる天国に行くと思っていればその通りになるという風に。
ただそうはいっても、霊界では、自分が見たことが、本当に起きているとは必ずしもいえないらしいから、ややこしい。たとえば、霊界の小川は、見る人によって、血の川に見えたり、黄金の川に見えたりするという。本人は美女と戯れているつもりが、他人からは化物と戯れていると見えることもなきにしもあらず。
こういうことは、本当か、嘘かはわからないが、もし本当であれば、霊界とはなかなかにシュールな世界のようだ。
自分は、宝くじで一等が当たるかもしれないとおめでたいことを考えることもあれば、あのクレーンが倒れてきたら即死だなと悪いことを考えることもある。もし霊界は、思いが実現する世界であれば、この世に生きているうちから、なるだけよいことを考える訓練をしておいた方がよさそうではある(笑)。


*繰り返し
上と同じ作品の最後に、次の言葉がそえられていた。

僕は、同じことの繰り返しこそ地獄ではないかと思う。
(同上、p.313)

このことをテーマにした作品は、わりと多いように思う。
まずは、本作もそれだ。主人公はデジャヴを感じつつ、同じ苦痛を繰り返し味合わされている。
怪談新耳袋の「帰宅」(桜庭ななみ主演)では、自殺者は、霊になってからも延々と同じことを繰り返させられることが描かれている。
涼宮ハルヒシリーズの「エンドレスエイト」も、同じことの繰り返しが描かれている。このエピソードは、切なく、悲しくもありながら、恐ろしくもあり、気が遠くなるような心持ちにさせられる。
こういった作品をみていると、同じことの繰り返しこそが地獄であるというのは、本当によくわかる。


*輪廻と苦
ところで、自分は以前は、輪廻は苦であるということがわからなかった。人は死んでも、生まれ変わりを繰り返しつつ、永遠に生きて行くということは、よいことのように思った。
でも近頃は、自分でいうのもなんだけど、ようやく輪廻は苦であるという考え方がわかりはじめた気がする。輪廻とは、人は決して死ねない、生まれ変わりながら、同じことを繰り返し続けるのだということだとすると、なんだか絶望的な気分になるし、これは苦以外の何ものでもないという感じがする。
輪廻は、苦なのだろうか。それとも幸なのだろうか。人によって、とらえ方はちがうのだろうけれども、同じことが苦になったり、楽になったりして、評価が正反対になり得るというのは、これもまた面白いことだなあと思う。〈了〉