*意外な台詞
佐々木丸美の本を読んでいたら、次の文章を見つけた。
佐々木丸美の本を読んでいたら、次の文章を見つけた。
人間は生まれようと希望して生まれてくるのではない。この世に誕生させられて、それじゃ生きてみようかと流されるにすぎない。(佐々木丸美『罪灯』〈創元推理文庫〉東京創元社、2009年、p.178)
佐々木丸美は神秘主義的な傾向が強い作家だと思っていたので、こんな考え方が開陳されているのは意外である。これは悪役の台詞ではなく、著者の思想を多く反映しているだろう登場人物の台詞だし…。
*生れた後が大切だということ
とはいえ、人間の誕生について、事実をありのままに見た場合、上の考え方はまちがってはいないかもしれない。
見たまんまでいえば、人はいきなり、この世に投げ出されるようにして生まれてくる。自分を意識した時、すでに自分はこの世にいるのである。その後で、自分を作って行く。つまり、人は、この世に投げ出されたあとに、その中身(精神)をこしらえる。
「人はこの世に生まれる前から存在しており、この世に生れようという意思を持って生まれてくるのだ」という考え方もあるけれども、残念ながらそれは証明できるものではない。
この世の現象を見る限りは、人はこの世に誕生させられて、その後で自己を発見し、生きるようになるとする以外にない。言葉を変えれば、人は生れる前ではなく、生まれた後につくられるということ。目的を持って生まれるのでなく、生まれてから目的を見出すということ。この考え方は不安を生む原因にもなるけれども、自由という点からみれば福音にもなり得るように思う。〈了〉
とはいえ、人間の誕生について、事実をありのままに見た場合、上の考え方はまちがってはいないかもしれない。
見たまんまでいえば、人はいきなり、この世に投げ出されるようにして生まれてくる。自分を意識した時、すでに自分はこの世にいるのである。その後で、自分を作って行く。つまり、人は、この世に投げ出されたあとに、その中身(精神)をこしらえる。
「人はこの世に生まれる前から存在しており、この世に生れようという意思を持って生まれてくるのだ」という考え方もあるけれども、残念ながらそれは証明できるものではない。
この世の現象を見る限りは、人はこの世に誕生させられて、その後で自己を発見し、生きるようになるとする以外にない。言葉を変えれば、人は生れる前ではなく、生まれた後につくられるということ。目的を持って生まれるのでなく、生まれてから目的を見出すということ。この考え方は不安を生む原因にもなるけれども、自由という点からみれば福音にもなり得るように思う。〈了〉