*宿りバチ
宿りバチ(寄生バチ)は怖いと思ってたけど、改めてその生態を調べると本当に怖い。
交尾を済ませたメスは、宿主の幼虫に卵を産み付ける。卵から孵ると、宿主の幼虫が死なない程度に宿主の体を食べて育つ。宿主が蛹になると、蛹の中身をすべて食べた後、蛹になる。やがて羽化した後、空になった蛹の殻に穴を開けて出てくる。
宿りバチは、宿主の体を食い破って出てくるイメージを持ってた。でもそれは最後の瞬間にすぎないらしい。普段は「宿主の幼虫が死なない程度に宿主の体を食べて」いるとのことである。これは怖い。怖すぎる。
内側から喰われる芋虫が、痛みを感じるかどうかは知らないが、かわいそうな話である。


*カッコウ
かわいそうといえば、カッコウの雛を育てさせられる鳥もかわいそうである。
先に生まれた本種のヒナは巣の持ち主の卵やヒナを巣の外に放り出してしまい、自分だけを育てさせる。
カッコウが、他の鳥の巣に卵を産むのは有名な話ではある。
でも実際はそれだけでないらしい。カッコウのヒナは早くかえって、他の鳥の卵を巣の外に捨ててしまうというのである。そうして自分だけがエサを独占して育つ。
これはとんでもなく、ずるいし、残酷だと思う。カッコウには腹が立つ。
ウィキペディアの説明を読むと、カッコウのヒナを育てさせられる鳥のなかには、オオヨシキリがいるという。オオヨシキリといえば、葦原の中で、ギョギョシ、ギョギョギョギョシと、やかましく鳴いている鳥だろう。あんなに元気で、うるさい鳥が、こんな悲劇を背負っているとは知らなかった。


*自然と善悪、神の意図
上のようなことを知ると、自然界では、道徳も、倫理もないのかなあという気がしてくる。共生の話には心癒されることもあるが、上のような話にはゾッとする。
もし神さまがこの世界をつくったのだとすると、一体、何を考えて、宿りバチやカッコウをつくったのだろう。なぜこんなに恐ろしく、残酷な生物をつくったのだろう。
もしかしたら、宿りバチやカッコウは、神さまがつくったときは善いものだったのだろうか。それなのに、自ら悪を選び、堕落したのだろうか。
はたまた、宿りバチやカッコウには、魂はなく、ただの生物機械であり、そんなものがなにをしようとも善悪の問題は生じないのだろうか……。
我ながら、馬鹿なことを考えてるなあという気がしないでもないが、創造説が本当だとすれば、これはなかなかに難問であるように思う。〈了〉