*内容
被災地では、津波などで多くの人々の人命が失われたせいか、不思議な体験をする人が続出しているという。
そういう体験の中には、怖ろしいと思わせるものもあれば、心が慰められるものもある。
本書では、主に後者について多くの証言が紹介されている。


*著者のスタンス
著者は、不思議な体験を頭ごなしに否定するのではなく、遺族の感情に配慮しつつ、肯定的に受け止めている。
確かに霊が存在するかどうかは分かりようのないことだが、遺族が不思議な体験をし、霊の存在をリアルに感じたのは事実であろうし、それによって慰めを得て、心の平安を取り戻す切っ掛けを掴めたならよいことである。
このようなことは、著者の言う通り、丁寧に記録し、後世に遺す価値はあると思う。


*遺族の感情
本書に収録された遺族の証言を読むと、亡くした家族に対する感情は、およそ次のようなものであるらしい。これは他と共通する点はあるように思う。

・遺体は焼きたくない
・遺体に手を合わせたくない。手を合わせれば、仏様になったと認めることになる
・遺灰は手元に置きたい。手放したくない。暗く冷たい墓の下に入れたくない
・あの世なんかには行かないで、ずっと傍に居てほしい
・幽霊でも何でも構わない。一目、姿が見たい。
・夢の中でもいいから会いたい
・こうしていたら、ああしていたらという後悔してばかりいる

そういえば、作家の三浦綾子は、妹を病気で亡くしたときに、野原に出て草葉の陰に妹の霊を捜し歩いたと書いていた。「隠れていないで出ておいで」と、妹の霊に語りかけながら歩いたという。
こういう思いは、特殊なものではなく、家族を亡くした者の自然な感情かもしれない。
ただ長い看病の末、ある程度の心の準備をした上で、家族を亡くした場合でさえも、相当な打撃は避けられないものであるし、それならある日突然に事故や災害で家族を亡くした場合の動揺ははかりしれないものがあるだろうと想像する。


*心の慰め
本書では、遺された家族の悩み、悲しみについて記録したあとは、どのように心の慰めを得て、再び生きる気力を取り戻したかについても綴られている。
それは大体、次のような体験によるらしい。

・死者の幸福  (故人は、もう苦しむことはなく、あの世で幸福にしていると実感すること)
・死者からの励まし  (故人は、今も霊として存在して、自分を応援してくれていると実感すること)
・傍に居るという感覚  (故人は、自分のことを見守ってくれていると実感すること)
・死者からの感謝  (故人から、「これまで、ありがとう」という感謝の思いを受け取ること)
・死者からの許し  (故人から、「これ以上、自分を責める必要はない」と許されること)

偶然の一致かどうか、これらはイタコなど霊的なカウンセリングで語られることと共通項があるようだ。
想像するに、この辺りに宗教の存在価値があるのかもしれない。


*まとめ
本書は、霊体験に興味を持つ人はもちろん、家族、恋人、友人など最愛の人との死別によって、傷つき、悩み、苦しんでいる人にも、多くの気づきと慰めを与えてくれる本である。
心霊に関する本には、単なる怖いもの見たさで興味本位のものもあるが、本書は、冒頭に書いたように、そういう軽薄なものではなく、遺族感情に配慮しつつ、真面目に綴られているので安心して読める良書だと思う。 〈了〉