映画『サイン』を見た。もう何回も見たことがある映画だが、やっぱり名作だ。

本作のあらすじは、悲惨な事故によって妻を亡くしたことから、神を拒絶して牧師を止めた男が、再び信仰を取り戻すというものだけども、
最後の場面で、どんなに不条理に思えることであっても、決して偶然ではなく、深い意味があるというメッセージが強烈に打ち出されているところがよい。

この辺りは、宗教を信じている人の多くには納得のゆく展開だろうし、現在ただいま逆境にあって、「なぜ自分が…」と悩んでいる人にとっては救いになるのではないかと思う。

以上の理由から、本作は、SF映画としてはともかく、宗教映画としては、なかなかの名作だと思う。

   

とはいえ、いくら名作だからといって、一つも不満がないというわけでもない。

たとえば、悲劇の意味については語られてはいても、悲劇が選択された理由については語られていないのは残念ではある。

できれば、次のような問いまで踏み込んでくれたら、もっとよかったのになあとは思う。

「神は全能であるという。それならば自らの計画の実現のために、悲劇ではなく、もっと人に優しい穏やかな方法も選択できたはずだ。
でも神はそうしなかった。なぜ神はそうしてくれなかったのだろう?」

ちなみに、スティーヴン・キングの『デスぺレーション』では、この辺りについて少し触れてた。

主人公の少年は、友達が交通事故に遭って重体になったことで宗教に目覚めるのだが、
少年は友人の事故の意味を覚った後で、なぜ神はそのような手段を選んだかを悩み続け、神は残酷だとしていた。

映画と長編小説とでは、その枠に大きな差があるから仕方ないことだけども、この辺りの葛藤の描写が見当たらないのは、やっぱり物足りないかも…。

でもこの点を考慮したとしても、本作が名画であることには変わりはない。
また、しばらくしてから見てみたい映画である。

〈了〉



*追記
本作は、宗教的作品と思ったが、ネット上の批評をいろいろと読んでみると、それとは正反対の解釈も成立するらしい。

・ M・ナイト・シャマラン監督『サイン』は名作なのだっ。

これは説得力のある解釈である。
本作を宗教映画とする自分の見方は、浅薄で、見当ちがいだったかも…。

まあ本当のところは、どういう解釈が正解なのかは分からないが、
名作というものは、いろいろな解釈ができるものだろうし、こういう正反対の解釈がありえるというのは本作の価値を貶めるどころか、高めることになるにちがいない。

というわけで、結論は、やっぱり本作は素晴らしい作品だなあと思う次第である。