旧約聖書 詩篇 (岩波文庫 青 802-1)
 しばらく前から、聖書の詩編を少しずつ読んでいるのだが、「わたしの親しき友は――暗闇のみ」(詩篇87)という一節には、はっとさせられた。胸にズブリときた。訳者の解説を確認してから読み直すと、どうやら詩人は親しき友からも避けられる不治の病だったらしい。「全詩編中最も悲しい詩」といわれるのも頷ける。
 また解説によると、「詩人の中心問題は「死」。死は詩篇において肉体の死よりも、神からの隔絶をいう」とのことである。とすると、「あなたは死者のために奇跡をなし給うや、亡霊は起き上がって、あなたをほめたたえようか」という一節は、墓の下の死者について言っているというだけではなく、信仰を失った者をも招いてくださるのかを問うているという解釈も無碍に却下されるとも限らないということだろうか。それともこれはいくらなんでも手前勝手でご都合主義に過ぎる考え方かな。
 と、ここまで書いて思ったけれども、ここで語られている悲しみは、多分に激しさを秘めている感じがする。日本の古典にある悲しみは、激しいというよりも、静かで乾いている雰囲気があるので、この辺りはやはり異文化ということなのだろうか。自分は優劣を問題にしたいわけではないけれども、どうもこの質的な相違に無頓着ではいられないのだから我ながら面倒な性格だ。