『モダンガール論』斎藤美奈子著
 映画『この世界の片隅に』を見て、モガ(モダンガール)なるものの存在を知って興味を持ったのであるが、そのものズバリのタイトルの本を見つけたのでページを開いてざっと眺めてみた。その内容は自分が想像していたものとは若干違っていて、モガだけでなく、明治以降の女性史といったものだが、これはこれとしておもしろい。
 まず著者は、本書の視点は、女性の地位は婦人解放運動でこれだけ進歩したのだという進歩史観ではなく、女性は長らく虐げられてきたという抑圧史観でもなく、リッチになりたい、いい服が着たいなど、物欲、名誉欲、出世欲などに率直な欲望史観から語るとしている。なんだかここだけ見ると、サブカル臭がものすごいのではあるが、それにかまわず読み進めてゆくと自分が知らないことがたくさん書いてあってわくわくしてくる。
 個人的には、本書の山場は「大正のアグネス論争=母性保護論争」であった。与謝野晶子は「女子の徹底した独立」と題して女子は経済的に自立し男にも国にも頼るべきではないとし、平塚らいてうはこれに対して「母性保護の主張は依頼主義か」と題して母子を保護するのは個人のみならず、社会、国家、はては人類のために必要とし、そこに山川菊栄が参戦してきて前者は女権論、後者は母権論と分類整理しまとめてきたのだそうな。この大袈裟な極論のぶつけ合いというか、わちゃわちゃ感には圧倒されるし、アグネス論争的なことが大正時代にすでに起きており、似たようなことが時を経て繰り返されているというのは興味深い。安易に普遍化してはいかんのだろうけれども、結局何でも同じことの繰り返しだというのは本当かもね。新しいものなんか、なんにもないと…
『モダンガール論』斎藤美奈子著 帯つき
 自分の本には帯はついてないけど、この画像をみると、なかなか元気でいい帯がついてたんだな。