日本国家の神髄 産経新聞社 佐藤優
 佐藤優の『日本国家の神髄』を読んだ。その主張は次のようなものらしい。戦前に編まれた「国体の本義」は、戦後になると占領軍によって禁書とされ、ファシズムや戦争を招くものであるかのように噂されたが、実際にはそのようなものではなく、むしろファシズムや戦争を押しとどめようとするものであって、外来の思想等は無暗に否定するのではなく、また無警戒に鵜呑みにして踊らされるのでもなく、冷静慎重な態度で対処し、有用なものについては国体に合う形に改良を加えて採用し、国力の充実をはかり、帝国主義の支配する世界を生き抜いて行こうと呼びかけるものであり、このような考え方は新自由主義など外来思想に蝕まれている昨今の日本にとっても有効であろうし、再確認する価値がある云々と…。著者からしたらその要約は違うと苦情が出そうな気もしないでもないが、とりあえず自分はこのように理解した次第である。
 個人的には、国体と聞くと、万世一系などを想起するし、そのことを意味しているのだろうと思っていたのではあるが、本書を読むと国体とはそれだけに限らず、日本の神話、宗教、伝統、文化全般はもちろん、さらには個々の日本人の生き方も含めているようだ。この点について知ることができたのは自分にとってはよかった。そういえば、「教育勅語」でもずいぶんと大きな話を書きつつ、人はどう生きるべきかということが書いてあったのだった。
 自分は保守かリベラルかと問われれば、保守であろうが、それでも戦後生まれの戦後育ちのせいもあってか、戦前の考え方については共感するところはありつつも、極端過ぎ、硬派過ぎと感じるところもあり、全面的に賛同することはできないのではあるが、それでもこういう本を読むと、日本の国民性、民族性の一端を知ることができるようでその点は有益であるように思える。以前、日本人論を読むのにハマったことがあるけれども、なんだかまたその手のものを読み漁ってみたくなってきた。