『真っ赤なウソ』養老孟司
 本書はタイトルにひかれて読んでみた。宗教コーナーで見つけたので、宗教は「真っ赤なウソ」だとする本なのだろうと思ったのだが、実際はそれに限ったものではなく、さまざまな問題について触れたものだった。その中で興味をひかれた話を挙げるとこんな感じだ。
  • 大正10年。水道の塩素消毒がはじまって以降、それまでは男性より短かった女性の平均寿命が急に伸び始めた。
  • アフリカで人口爆発がおきているのは、スポーツ飲料による。子供の死因は下痢と脱水が多かったが、これによって子供の生存率が高くなった。
  • 近代前の人は自分は永続しない、無常だと考えていたが、現代人は変わらない自分が永続し、死なないと考えがちである。これは昔は折に触れて名を変えたが、現代人は生まれて以降ずっと名を変えないこととつながっている。
  • 独創的なことは他人と共有されない。自分の話を他人が分かるということは、個人心理は存在しないということ。
  • 無宗教の葬式では「参列者は手持ちぶさた」になる。
  • 倫理は個人的なものであり、マニュアルは他者と共通のルールであるから、「倫理マニュアル」とはおかしな言葉であり、考え方だ。
  • 宗教は「ウソから出たマコト」である。ハリー・ポッター、千と千尋の神隠しが流行るということは、宗教が弱っているということ。
  • 西洋で出会った無神論者からは、宗教や教会に対する反感は認められたが、神に対する反感は感じられなかった。
 以上。本書の話題は多岐にわたっているので、何についての本かと問われれば、一言ではこたえにくいのではあるが、小ネタの宝庫で面白い本であるとは言えると思う。