『世界を動かす「宗教」と「思想」が2時間でわかる』蔭山克秀

*概要と感想
 本書では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、東アジア諸国などの国民のものの考え方を解き明かしつつ、キリスト教、イスラム教、儒教、社会主義についても説明してある。
 その文体は軽妙、平易でとてもわかり易く、すらすら読める。ただ大ざっぱすぎると感じるところがなくもない。たとえばイギリスについては「島国人は村人だし、村人は保守的だから、その結果、みんなそこそこのところで満足し、その後現状にそこそこ不満を抱く」(p.72)云々という具合に単純化しすぎて偏見を助長することになりはしないかと心配になるところはある。
 とはいえ、本書はいろいろな思想宗教の要点を掴んだり、それぞれの国民性を大まかに把握するには良い本である。


*科学と宗教
 個人的には、本書の中ではこの部分にはよく納得できた。
科学や理性は「頭」で宗教は「心」と、それぞれ担当部署が違う。科学や理性は簡単に「神を殺す」が、心は神を求め、神に居場所を与える。なら科学が「神の存在証明をしようぜ」なんて野暮なことを言い出す前に、科学とは別ジャンルの「安らぎの源」として、完全に棲み分けてしまった方がいい。その方が、お互いにとって幸せだ。

(『世界を動かす「宗教」と「思想」が2時間でわかる』蔭山克秀著、青春出版社、2016年、p.48)
 本来なら科学と宗教が一致しているのが理想であろうし、「棲み分け」という考え方には抵抗を感ずる人もいるだろうが、現実的には両者の一致も、共存も難しいだろうし、いらぬ衝突を避けるには一定の距離を保つということも時には必要なのだろう。