『存在の耐えられない軽さ』クンデラ著、千野栄一訳、集英社文庫

 『存在の耐えられない軽さ』を通読してみた。本作はプラハの春の時代を舞台とした作品であるが、頁を繰るうちに監視社会の窮屈さ、理不尽さにやるせない気分にさせられた。こんな社会では自分は到底生きては行けまい。
 結局、人は生存欲旺盛なのが一番なのかもしれない。共産主義であれ、資本主義であれ、他のどんな社会であれ、生きることを厭い、何事もすぐに面倒に感じてしまう質の者はやすやすと排除され、生きることに執着し、そのためには他を押し退けることも躊躇せず、厚顔無恥な者がよい位置を占めるものなのではなかろうか。このことはわざわざ歴史を調べずとも、バーゲンセールを見物すればすぐ分かる。生存競争に生き残り、いい暮らしをするためには、ガツガツ戦略最強である。
 ちなみに本作は、あのカラフルな世界文学全集で読もうと思っていたのだが、何気なく入った本屋で集英社文庫のものを見つけたのでこちらで読むことにした次第である。アマゾンのレビューにある両者の翻訳の比較を読むと、自分の選択は間違っていなかったようで一安心だ。ただ文学全集は解説が充実しているようなので、小説の内容を忘れないうちに、一応そちらも見ておくつもりではある。