『無神論 二千年の混沌と相克を超えて』竹下節子著

*あの人も、この人も、みーんな無神論者?
 しばらく前から無神論概説というような本が読みたいと思っていたら、先日とある書店で本書を見つけたのでさっそく読んでみた。前半は西洋の無神論の歴史で、後半は無神論に関連したエッセイ集といった体裁である。自分には後半は難しかったが、前半は面白かった。
 本書によると、およそ二千年前は、ローマ帝国側はローマの神々を認めないキリスト教を無神論だと非難していたそうである。そうして宗教改革の時代になると旧教と新教とでお互いを無神論だと罵りあったという。当然ながら、当事者は真剣に考え、意見を述べていたのだろうけれども、これにはどうもおかしみを感じてしまう。
 結局、無神論者かどうかという判断は相対的なものであって、見様によって信仰者が無神論者とみなされたり、逆に無神論者が信仰者とみなされたりするものなのだろう。 


*反論不能の証明
 最後に本書でもっとも感動的だったのは「神が存在しないことの反論不能の証明」についての話だった。この証明は「カラマーゾフの兄弟」のイワンの意見と関連していそうなものだったが、非常に説得力があった。人としての感情を捨てない限りは、この証明を覆すのは誰にもできなそうだ。