『『涅槃経』を読む』  高崎直道著

*涅槃で待ってる
 涅槃という言葉をはじめて知ったのは、ある自死した俳優の遺書に「涅槃で待ってる」と書いてあったというテレビ報道を見た時だった。当時はまだ幼かったのでその俳優が抱えていた苦悩は想像もできなかったが、涅槃という言葉だけは頭の中に残ったのだった。
 そのせいか今でも涅槃と聞くと、釈尊や仏教のことよりも、まずこの俳優の名と顔を思い出してしまう。このイメージは今後も消えることはなさそうだ。
 

*再読したい本
 前置きはこのくらいにして、そろそろ本書のことについて書きたい。
 「涅槃経」には前々から興味があったので、本書を読んでみたのであるが、本書では「涅槃経」のことだけでなく、それ以前の思想的発展の経緯に触れてあるのが有り難い。法身、仏性、一闡提などの意味または捉え方が歴史的にどのように変化したのか、涅槃経においてはどのような見解に到達したのかなど。
 自分のような素人には、このように結論だけでなく、そこに至る過程を丁寧に説明してもらえるのは本当に有り難い。感謝。
 とはいえ、その説明を理解できたかと問われれば、恥ずかしながら胸を張ってうなずくことはできないのではあるが…とりあえずは本書は折を見て二度、三度と読み返してみることとしよう。少しずつでも理解は進むだろうと期待して。


*割れやすい?
 ところで本の中には、ずいぶんと割れやすい本があるように思う。とある新興宗教の本も、出版後数年しか経っていないにも関わらず、少し力がかかっただけで、パリッと割れて、ページが外れてしまうものがあったのだった。
 文庫本にも、ここまでは酷くはないものの、他と比べて割れやすいものもあるように思う。文庫本なのだから仕方がないとも言えるが、自分の手持ちのうち、他の出版社のものは何ともないのに、特定の出版社のものには割れているものが複数あるというのは気にならないでもない。こういうことは、そういうものだと思って、他の物より注意して扱うようにするしか仕方がないか…。