ゴールディングの「蠅の王」は、自分にとっては、並のホラーよりも、おっそろしい小説である。飛行機事故で、子供たちが無人島に取り残されるというところまでは、よくある流れともいえるが、その後、子供たちがおかしくなっていくところは、おそろしい。
 
作者の意図とはちがうかもしれないが、社会との関わりが断ち切られ、狭い空間に閉じ込められた人々の精神が崩壊して行くというのは、カルト宗教の悲劇を思い出させるものがある。やはり、心の健康のためには、仲間だけでかたまるのでなく、世間との接点は維持する必要があるのかもしれない。