本書は、ドーキンスによる子供たちへの特別講義を翻訳したものだ。写真も豊富に掲載されている。

ドーキンスの著書は難しいと感じることも多いが、本書は子供向けの講義であるためか、とても分かり易くなっている。デザインされたものと、デザインされたように見えるもの。人間の目などは、突然に今の形になったのではなく、少しずつ進化してできたこと。遺伝子の乗り物としての生物。脳の特性と錯覚。というような事柄が平易に語られている。また随所に創造論への批判も盛り込まれている。

最終章には、ドーキンスのインタビューが掲載されている。これまでの著作のテーマについて本人が簡潔に説明しているので、読書案内としても活用できそうだ。また下のような問答は感動的だ。

―― あなたの確固とした勇気ある態度というものは、一体どこから来ているのでしょう。

ドーキンス 創造説(Creationism)に対する戦いの姿勢のことを指しているのであれば、それは真実を求める気持ちに端を発しています。世界の本当の姿はどのようなものなのか、どのように機能しているのかということに対する純粋な好奇心と感動です。そして人々、特に子供たちが、そういった素晴らしさに触れる機会を奪われることに対する、憤りと困惑に根ざしています。
(『進化とは何か』ドーキンス著 吉成真由美訳、早川書房、2015年、pp.227-228)

この部分を読んだときは何となしに、思無邪という言葉を連想したが、これは必ずしも自分だけではないのではないかと思う。