*長所と短所
巷には、「長所と短所は同じものだ。長所は短所であり、短所は長所だ」という見方がある。本当にその通りだと思う。
たとえば、正義感の強さという長所は、短気という短所になりえる。また優柔不断という短所は、優しいという長所にもなりえる。長所と短所は、同じものを、ちがった角度から見てるだけなのだろう。

*短所はなおすべきか
と、このように考えてくると、短所だからといって、なおせばいいというもんじゃないことになる。短気をなおした結果、正義感が弱くなってしまったり、優柔不断をなおしたら他人に気を使わなくなり、優しくなくなったというのでは困る。これでは、角を矯めて牛を殺すようなものだ。
いっそのこと短所は、なおそうとするより、磨き上げる方がおもしろそうだ。短気は義憤に、優柔不断は思慮深さに熟成させて行くという風に……。短所とは、ある意味、未成熟な長所でもあるのだろうし、なおすべき欠点というよりは、どんどん養分を与えて成長させ、磨き上げるべきものなのだろう。

*個性的ということ
個性というものは、長所と短所によってつくられている。もし長所も短所もないなら、何の特徴もない、のっぺらぼうということだろうし、そこには個性は生まれない。
そうであれば、個性を輝かせるためには、長所だけでなく、短所も大切にする必要がある。短所は、自分が自分であるためには、長所と同じくらい大切なものである。〈了〉