『悪魔の奴隷』 (2017年、出演タラ・バスロ、監督ジョコ・アンワル)
*概要、あらすじ
本作はインドネシアのホラー映画で、「夜霧のジョギジョギモンスター」のリメイク版である。
大まかなストーリーは、主人公は、祖母、父母、弟たちとともに、人里離れた場所に建つ大きな家で暮らしているが、長患いの母の死後、一家はさまざまな怪奇現象に襲われるというもの。
大まかなストーリーは、主人公は、祖母、父母、弟たちとともに、人里離れた場所に建つ大きな家で暮らしているが、長患いの母の死後、一家はさまざまな怪奇現象に襲われるというもの。
*感想
インドネシアのホラー映画を見たのは、これがはじめてだけども、作品の背景にある宗教心、文化、オマージュという三点についてはすごく興味深かった。以下に少し詳しく述べてみる。
*宗教的側面
まず宗教について触れると、作中において、イスラム教の宗教家は、悪魔対策として祈りの大切さを説いている。
私にできるのは/神に助けを乞うことだけだ
祈りなさい/唯一なる全能の神に/祈りを捧げ/絶対的な服従を示しなさい/神は天地万物の/支配者なのだからだが心から/心服しなければ/人は弱い存在のままだ
村の人たちを招待して/君の家で集団礼拝を行おう
住民が/礼拝をしない家には/悪魔が取りつきやすい
また宗教家は、死者が幽霊となって出てくるということはないともいう。
死者は生きている者を/煩わせたりしない大抵は 愛する者の姿をした/別の存在の仕業だ
ようは、悪魔が人を惑わすために、亡くなった母親の姿をとって現れているということらしい。
日本であれば、成仏できない霊が迷って出てくるというし、悪魔対策といえば神への祈りというよりは、おまじない的なものになるだろうし、この辺りは全然ちがっているのは興味深い。
日本であれば、成仏できない霊が迷って出てくるというし、悪魔対策といえば神への祈りというよりは、おまじない的なものになるだろうし、この辺りは全然ちがっているのは興味深い。
「住民が/礼拝をしない家には/悪魔が取りつきやすい」という考え方も興味深い。これも日本にはない発想のような気はするけど、ひょっとしたら、神棚や仏壇に手を合わせる感覚と似てるのかな。どうだろう。
ちなみに作中では、主人公は、宗教家のアドバイスに従うのだけれども、祈りの最中に、背後に現れた悪魔に襲われてしまう。この展開は、祈りの力を否定して、宗教を皮肉ってそうではある。
それとも主人公は宗教家の注意を守れず、神に絶対的な服従を示せてなかったということかな。
*文化的側面
二つめは文化的な側面である。
作中では、家の中に井戸があったり、そのすぐ傍で子供が小便をしたりしているのは驚く。
また突然に電灯が消えても、登場人物たちは停電だろうとして落ち着いているのはたのもしい。
そういえば、ジーコ監督時代のサッカーの試合で、インドのスタジアムのライトが消えて、試合が中断したことがあったのだった。でも現地の人々や、ジーコはさほど動揺していないようだった。停電は彼らの国ではさほど珍しくないらしい。
これはインドの話ではあるけれども、なんとなしに世界は広いという心持ちがする。
作中で、若い男女がごく自然に、二人で遠出していたのも印象的であった。
作中では、家の中に井戸があったり、そのすぐ傍で子供が小便をしたりしているのは驚く。
また突然に電灯が消えても、登場人物たちは停電だろうとして落ち着いているのはたのもしい。
そういえば、ジーコ監督時代のサッカーの試合で、インドのスタジアムのライトが消えて、試合が中断したことがあったのだった。でも現地の人々や、ジーコはさほど動揺していないようだった。停電は彼らの国ではさほど珍しくないらしい。
これはインドの話ではあるけれども、なんとなしに世界は広いという心持ちがする。
作中で、若い男女がごく自然に、二人で遠出していたのも印象的であった。
*オマージュ
気のせいもあるかもしれないが、本作は、随所に先行するホラー作品へのオマージュを感じさせる場面がある。
ゾンビらが押し寄せてくる場面は言うまでもないが、
子供たちが吸引されるように引っ張られている場面は「ポルターガイスト」、
井戸から女が出てくるのは「リング」、
初老の男性が主人公らの救出に駆け付けるのは「シャイニング」、
家族で車に乗り込んで逃げるのは「悪魔の棲む家」、
悪魔の子を産まされたり、アパートの隣室に悪魔崇拝者が住んでいるのは「ローズマリーの赤ちゃん」、
自分はこれくらいしか気が付かなかったが、ホラー映画に詳しい人であれば、もっと探せそうでもある。
こういう遊び心は、なかなかに愉快である。〈了〉
ゾンビらが押し寄せてくる場面は言うまでもないが、
子供たちが吸引されるように引っ張られている場面は「ポルターガイスト」、
井戸から女が出てくるのは「リング」、
初老の男性が主人公らの救出に駆け付けるのは「シャイニング」、
家族で車に乗り込んで逃げるのは「悪魔の棲む家」、
悪魔の子を産まされたり、アパートの隣室に悪魔崇拝者が住んでいるのは「ローズマリーの赤ちゃん」、
自分はこれくらいしか気が付かなかったが、ホラー映画に詳しい人であれば、もっと探せそうでもある。
こういう遊び心は、なかなかに愉快である。〈了〉