かつて自分が所属していたカルトは、ものごとの正邪を非常にやかましくいう団体だった。
たとえば、こんな感じである。
「当団体は正しい宗教であるが、あの団体は邪教だ」
「当団体は正しい教えを説いているが、あの思想は邪悪だ」
「当団体は正しい教えを説いているが、あの思想は邪悪だ」
さらには、こういう主張もよく聞かされた。
「我々は神の正義を体現しているのである。それを認めない彼らは悪であり、悪霊悪魔と同じだ。改心しなければ地獄に堕ちるだろう」
まさしく、自分らは真っ白で、他者(批判者)は真っ黒だという考え方である。
この結果どうなったかというと、今この団体の人々は、他者の意見に耳を傾けることはできなくなり、外部の人々との交流は薄れ、同じ信仰を持つ仲間だけで固まり、カルト化に歯止めが止まらなくなってきているようだ。
これは、正邪を単純に分かち、なんでもハッキリ白黒つけたがる考え方の危険性がよくわかる事例であると思う。
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思うに、現実の世の中は、白黒でバッサリ分けられるほど単純なものばかりではない。
たとえば、どのような団体であれ、良いところもあれば、悪いところもあるものだ。
また、どういう思想にも、良いところもあれば、悪いところもある。
完全に真っ白な団体や思想なんて無いし、完全に真っ黒な団体や思想も無い。これが現実。
自分はカルト信者だったころは、こんな当たり前のことも分からず、なんでも単純に正邪、白黒を決めつけてしまい、、ものごと一つ一つのプラス面、マイナス面を考えることを怠っていたのだった。
この点、本当に反省しないといけないなあと思う。
カルトに染まると、思考力を失うというけれども、これは本当に怖いことである。
〈了〉