巷には、「批判はよくない」という意見があるけど、これはよく分かる。
なぜかといえば、そういう教育を受けてきたからである。

自分は小さい頃から、何度も何度もこう教えられてきた。
「目上の人の言うことには、黙って従いなさい」
「叱られたら、すぐに謝りなさい。口答えしたり、言い訳してはいけません」
「生意気なことを言ってはいけません」

また、こうも教わった。
「喧嘩はいけません」
「人を傷付けてはいけません」
「『自分が、自分が…』というのはいけません」
「お互いに譲り合いなさい」

この教育の是非はともかく、自分は幼い頃から、縦の関係については従順さを、横の関係については他に譲歩すべきことを教えられてきたので、批判はよくないという意見は理解できなくもない。

また最近は、次のような感慨もある。
「議論になると時間をとられるし、ストレスにもなるし、面倒くさい」
「ややこしい相手には、なるだけ関わらないのが無難だろう」
「良かれと思って批判しても、恨みを買うばかりだし、あとから『物言えば唇寒し秋の風』のような気分になりがちだ」

というわけで、自分は「批判はよくない」という意見は、よく分かるように思う。
ただそうは言っても、「批判はよくない」というのを通り過ぎて、「批判は絶対よくない」「批判は許されない」という域にまで達してる場合は、疑問符はつく。

たぶん、そこまで行ったら、次の意見に説得力が出てくる。
「なあなあで馴れ合ってるばかりでは仕方がない」
「言うべきことは言うべきであり、批判すべきことは批判すべきである」
「『これは間違っている』と確信していながら、何も言わずに黙っているのはおかしい」
「義を見てせざるは勇無きなり」

あんまり批判しすぎて、いらぬ争い事ばかり起こしてもつまらないのは確かではある。
でも一切の批判を封じるというのも、これまた極端すぎて、困りものである。
何事もバランス感覚が大切だというけれども、多分これは批判についても言えることなんだろうなあと思う。〈了〉