*嘘つきは短気になる?
さらに、『カラマーゾフの兄弟』の感想を書いてみる。
自分に嘘をつくものは、他のだれよりも腹を立てやすい。なにしろ、腹を立てるというのは、時としてたいそう愉快なものですからね。
(『カラマーゾフの兄弟1』ドストエフスキー著、亀山郁夫訳、光文社〈光文社古典新約文庫〉2007年、p.113)
「腹を立てやすい人は、他人の嘘にすごく厳しいことが多い」とは常々感じていることではあるけど、「自分に嘘をつくものは、他のだれよりも腹を立てやすい」ということは迂闊なことに考えたこともなかった。

でも言われてみれば、さほど悪質とも言えない嘘に、怒髪天を突くような怒り方をする人は、嘘つきの自分を相手にうつしているのかもしれない。

こう考えると、激怒癖のある人が、他人の嘘に対して、ものすごく過剰反応することも理解できるような気もする。

また激怒癖のある人は、傍から見てすごく大変そうである。お節介かもしれないが、そんなに怒ってばかりいたら辛いだろうな、そういう性格はなおした方がいいのではないかと思ったりもする。

でもその手の人は、そういう自分の性格を反省してなおそうとするよりも、相手を責めてばかりいる。「自分は本当は怒りたくないんだ」「なんで自分を怒らせることばかりするんだ」「自分を怒らせるな!」などと、さも怒ることに嫌気がさしているようなことを言いつつも、自分の短気をなおす努力をしている様子はない。

結局これは、口では怒りたくないと言ってても、内心では怒ることに愉快を感じているということなのだろうか。だから短気をなおそうとはしないのだろうか。

こういう見方は、なんだか嫌味っぽすぎる感じがしないでもないが、それでも一面の真理を表しているような気がしないでもない。

激怒癖の原因は、他人に対して期待と関心を持ち過ぎているからだろうと思っていたけど、自分に対する嘘と快楽のためというのはなかなかおもしろい見方ではある。