「私の個人主義」をひさしぶりに見直してみた。
といっても、大雑把にざっと見ただけだけど、やっぱりいいなあ。
たとえば西洋人がこれは立派な詩だとか、口調が大変好いとか云っても、それはその西洋人の見るところで、私の参考にならん事はないにしても、私にそう思えなければ、とうてい受売をすべきはずのものではないのです。私が独立した一個の日本人であって、けっして英国人の奴婢でない以上はこれくらいの見識は国民の一員として具えていなければならない上に、世界に共通な正直という徳義を重んずる点から見ても、私は私の意見を曲げてはならないのです。(青空文庫)
私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気慨が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。この講演録をはじめて読んだ時は、(同上)
宗教のことでいろいろ悩んでいた時期だったけど、
暗闇の中をさまよっている時に、
ロウソクがぽっと灯った心持ちがしたのだった。
暗闇の中をさまよっている時に、
ロウソクがぽっと灯った心持ちがしたのだった。
当時、自分がハマってた宗教は、
教祖崇拝タイプのものだったので、
権威主義や個人崇拝を退ける漱石の意見は、
ほんとうに、目からウロコだった。
「教祖の言葉を信じなければならぬというけど、
どうしたって納得できないのだから仕方がない。
納得できてないのに納得したふりをするよりも、
自分に正直になって、
納得できないものは納得できないとするしかなかろう」と。
自己本位とは、
我を押し通せということではなく、
一定の見識、人格を備えた上で
自己に正直であろうということだろうし、
この自己に正直であるというのは、
本当に大切だなと、今でもしみじみ思う。