もう大分前のことだけど、『古事記』を通読しようと思って、新潮の日本古典集成のものをひらいてみるも、すぐに挫折したことがある。その後はもっと簡単なものは無いかと探し、とりあえずは現代教養文庫の『古事記物語』を通読し、兄妹の悲恋物語が印象に残ったのだった。
 以来、『古事記』からはずっと離れていたのだが、最近になってようやく、角川ソフィア文庫の『古事記』を読めた。といっても、現代語訳だけをおおざっぱにななめ読みしただけだけど…。これまで上巻をざっと眺めるだけで挫折することを繰り返してた自分としては、たったそれだけでもけっこう達成感はあるのだ。
 今は、講談社学術文庫の『古事記(下)』を、ちまちまのぞき始めたところ。これまでは頭から読み始めても上巻で挫折することが多かったので、そんならお尻から読んでやれと、今回は下巻から読んでいる。
 で、そうやって読み始めて、すぐに気づいたことだけど、この本は解説が充実していてすごく楽しい。一段ごとに、この話はどこそこの神話との関連が指摘されているだとか教えてくれているし、本文が淡泊過ぎて無味乾燥なようでも、解説を読むことでその背景を知り、興味が持てようになっている。他の箇所とのつながりを説明したり、系図も載っており、物語の全体に対する位置もわかりやすくてよい。この本は自分にとっては詳細すぎてレベルが高すぎるけれども、それだけに折に触れて読み返す本になりそうだ。
 自分は、解説や評論などを軽視して、本文をしっかり読んでさえいればいいんだと考えてしまう自惚れやだけども、こういう本を読むとつくづく解説の大切さ、専門家のすごさを思い知らされる心持がする。
20191215 『古事記』新潮日本古典集成
20191215 古事記物語―若い人への古典案内 (現代教養文庫)
20191215 新版 古事記 (角川ソフィア文庫)
20191215 『古事記(下)』 講談社学術文庫
 こうしてみると、一口に『古事記』といっても、いろいろあるなあ…。