聖書の世界 (光文社文庫―グラフィティ・歴史謎事典)
 本書は文庫本サイズで、現地の写真を豊富に掲載していて、眺めているだけでも楽しい本だ。古代イスラエルの歴史の紹介や、ソドムとゴモラは実在したのか、大洪水は本当にあったのかなどについても発掘調査の結果とともに解説されている。一つのテーマは2~4頁くらいで簡潔にまとめられているので読みやすくてよい。
 個人的には本書のなかでもっとも印象的だったのは、監修者による「はしがき」だった。それによれば、古代イスラエルの遺跡は、エジプト、ギリシャ、ローマのものと比較すれば貧弱で規模も小さいし、「物質文明という点では、パレスティナ先住民にさえ劣っていた」という。ただしそれでいながらも、思想宗教の分野では、聖書を生み出し、それは現在も世界中で読み継がれ、大きな影響力を持っているとのことである。
 自分はこれまで、政治経済が発展し、物質文明が栄え、豊かな生活をする者が増え、余暇の時間が確保されてからようやく思想宗教が深められてゆくのであって、ある程度の豊かさがなければ思想宗教は発展しないだろうとばかり考えていたので、こういう話は新鮮な驚きであり、愉快な心持ちがする。
 本を読んでいると、こんな風に新しいこと知ったり、気づかされたりすることがあるから楽しい。だから読書は止められない!