幸福の科学との訣別 私の父は大川隆法だった
 本書は、「幸福の科学」教祖・大川隆法の長男である宏洋氏が、大川家の内情を語ったものである。目次のあとにある説明文によれば、氏への「ロング・インタビューをもとに構成したもの」という。
 自分は、幸福の科学(HS)の元信者だったとはいえ、地方の末端信者にすぎなかったので、大川家の内実について知るよしもなく、宏洋氏の話の真偽を判定できる材料はもたないのではあるが、それでもリアルに感じる箇所はあった。
 たとえば本書には、大川隆法は宏洋氏に、テストでは「とにかく100点を取りなさい。99点も0点も一緒。100点以外は意味がないんだ」と言っていたらしいが、これは『仏陀再誕』の100パーセントの信仰と同じ考え方であり、いかにも大川隆法が言いそうなことである。
 また、宏洋氏の弟妹はみな幸福の科学を信じていないというのも、いかにもありそうなことだ。もしかすると弟妹のみならず、大川隆法自身さえも信じていないのではなかろうか。霊言は教団内でするだけで、教団の外で、専門家や反対者を招いて本物だと証明しようとしないのは、偽物だという自覚があるからなのだろう。
 大川隆法は自分で決断できず、宏洋氏に相談を持ち掛けていたという話もリアリティがある。大川隆法はいわゆるファルコン告発でもそのような性格に語られていたし、実際の大川隆法も何かを決断をするときは、大概は自分の決断とは言わずに、諸如来諸菩薩たちがそのように言っているという形にすることが多いと思うので…。
 本書に対しては、HS側から異論、反論があるので、その内容の評価はこの論争に区切りがつくまでは定まらないのではあるが、ただそれでも教祖の長男がこのような著書を発表したという事実は、HS界隈では非常に大きな出来事ではある。これによって、釈迦にはダイバダッタ、イエスにはユダという離反者がいたものの、大川隆法の場合は原、関谷、種村、きょう子、宏洋…というように功労者、幹部、高弟、妻、長男など多数の離反者が出たということであり、大川隆法が釈迦やイエス以上の存在であると主張することはますます困難になる一方だからだ。宏洋氏はこの他にも批判材料は多く持っていて第二弾、第三弾も可能であるようだし、HSには気の毒なことだと思う。




◇◆ 追記 2020.5.16 ◆◇


*訣別
 本書の「これから ――あとがきにかえて」を読むと、宏洋氏はHS職員を辞めたこと、HSとの関係を断つことを、訣別としているらしい。
 一方、HS側は、宏洋氏は決別するといいながらも、繰り返しHS批判をしていてちっともHSから離れようとしないのはおかしいと言っている。どうもHSのいう訣別とは、HS職員を辞め、かつ相互交流や付き合いなどの関係も断つのはもちろん、HSについては批判も肯定もせず、完全に口を閉ざして沈黙することをも求められることらしい。
 こういうHSの主張からすると、カルト新聞の記事で、HSの退会手続きには「退会後の批判活動等をしないよう宣誓させる内容も含まれてい」るとしていたのは、あながち嘘ではないのかもしれないと思えてくる。もしこれが事実であれば、HSは改めた方がいいと思う。