*疑問
幸福の科学(HS)の信者らのツイートをみていたら、渡部昇一を自分たちの仲間のように語っているものが散見された。
渡部昇一が、HSの信者だったり、シンパだったりするなんてありえるのだろうか。
そんな疑問を覚えたので、生前の著作などを調べてみた。
*生前の言葉(前世、カルマ)
渡部昇一はカトリックの信者であることは有名な話である。キリスト教は生まれ変わりやカルマを認めていないと認識した上で、キリスト教を信じていたわけである。
とすると、渡部昇一は生まれ変わりもカルマも信じてはいなかったのであろうし、どちらも事実とする幸福の科学とは正反対の立場にあるといえる。
*生前の言葉(過去世認定)
上の書籍のなかでは、大川隆法による過去世認定についても話題になっている。
話の流れは、渡部昇一は、大川隆法による過去世認定には疑問を感じつつも、かといって霊能力のない自分には否定も肯定もできないとし、やや困惑気味であるが、霊能があるという本山博から、大川隆法は渡部昇一の本を読んで過去世の見当をつけただけだろうといわれて納得したというものである。
渡部昇一は、オカルトなど、世の中には不思議なことがありえると考えているそうだが、クリスチャンとして生まれ変わりは信じていないようであるし、おそらくはこれが普通の対応だろう。
*生前の言葉(新興宗教の教祖)
渡部昇一が、新興宗教の教祖や、仏教について何と言っていたかは、本末天道さんがブログ記事にまとめてくれている。失敬して、スクショするとこんな感じだ。
教祖のベストセラー本については、過去に自分も記事にしたことがある。
これらの言葉からすると、新興宗教の教祖である大川隆法について、渡部昇一がどう考えていたか、おおよその見当はつく。
*対談(『フランクリー・スピーキング』)
とはいえ、渡部昇一は過去に、大川隆法と対談していた。
ただ『フランクリー・スピーキング』では、渡部昇一は大川隆法の話を批判したり、議論したりということはしていない。ゆるやかな、友好的な雑談といった風情だ。
また渡部昇一は、幸福の科学だけでなく、深見東州のワールドメイトともからんでいるのは有名な話だ。
このことからすると、渡部昇一は、大川隆法と幸福の科学を特別に信頼していたから対談をしたというよりは、宗教やオカルトにはアレルギーがなく、若干の興味もあるので、社会を騒がせた大事件を起こしたような危ない団体でもないかぎりは、対談や仕事の依頼があれば応じるというスタイルだったと推定される。たとえば、HS映画には、信者でもシンパでもない芸能人が関わっていたりするが、それと同じような感じなのだろう。
*対談(幸福実現党・釈量子)
リバティの記事をみると、渡部昇一は幸福実現党の釈量子とも対談をしている。
ここでの渡部昇一の発言は大体いつも通りのものだ。渡部昇一からしたら、政治や歴史についての持論を語れればそれでよく、対談相手のことはそれほど気にしてはいないのだろう。このことは、HSとは対立関係にあるワールドメイト関連のシンポジウムに出席していたことからもわかる。
*霊言の真偽
なぜHS信者たちは、渡部昇一を信者かシンパのように言うのかといえば、どうやらこういう霊言の影響があるらしい。
一応、これがどんなものだか見てみようと思って、地元の大手書店に行ってみたが、残念ながら店頭にはなく、確認できなかったのであるが、この霊言の真偽は、和歌、漢詩などが暗唱されているかどうかを一つの目安にしてみるのもいいかもしれない。
自分の見分の範囲では、大川隆法の講演、法話などでは、和歌や漢詩を諳んじることはあまり無い。というか、皆無といっていいほどではあるまいか。
それに比べて、渡部昇一は、和歌、漢詩、英詩、名言などをたくさん暗記していて度々それを口にする。このことからすれば、渡部昇一の霊言が、本物かどうかをみるときに、話の途中に、和歌、漢詩などの暗唱がごく自然になされているかを見れば一つの目安になるだろう。
また渡部昇一の話には、それがどんな話題であっても、英語の語源についてのうんちくが挿入されることが多い。ラテン語やドイツ語についても語られたりする。
大川隆法は英語の勉強をしているようなので、この手の知識もあるのかもしれないが、今のところ講演、法話などではこの方面の知識が披露されたことはあまりないだろうし、それほど詳しくはないのかもしれぬ。としたら、この点も霊言の真偽判定のための一つの目安になりえるだろう。
*まとめ
以上のことからみると、生前の渡部昇一は、大川隆法および幸福の科学とは一定の距離を保っていたようだ。氏が大川隆法は主エルカンターレであると信じるという信仰宣言をしたとか、幸福の科学の信者だと告白したなどということもない。幸福の科学とそれなりに関わってきていながら、教祖と教団のことを特別にヨイショする発言も見当たらない。
これらを総合すると、渡部昇一は大川隆法および幸福の科学を敬遠はしていなかったろうが、かといって高く評価しているというほどでもなく、ある程度の距離を保った付き合いをしていたと結論付けるのが穏当だろう。
ただあえて一歩踏み込んでいえば、教祖の書いたベストセラー本についての言葉から類推すれば、大川隆法のことはさして評価しておらず、その著書にも興味はないというのが本音だったろう。ただ氏は、思想宗教が違う人とは付き合わないという了見の狭い人ではなかったため、HSやワールドメイトなどの新興宗教を特に拒むこともせず、対談に応じたり、シンポジウムに参加したりしていたのだろう。
渡部昇一から見た大川隆法と幸福の科学との関係は、大体、以上のようなものだったろうと思う。