十二国記シリーズは『白銀の墟 玄の月』まで読了。はじめは異世界ファンタジーのラノベだと思って気軽に読み始めたのではあったが、なかなかどうして、政治、歴史、軍事、宗教、倫理…など、さまざまな要素を含んだ濃密な物語で、読み応えのある作品だ。人気作なのも合点が行く。
ちなみにシリーズ全体を通しての自分なりの感想をいえば、主要な登場人物らはみんな、講談本の武将のように命を賭して大義を尊び、筋を通して考え、行動しているのが格好良くてたまらなかった。自分にはそういう生き方はとてもできないので、それを実行する登場人物らにはほれぼれしないではいられない。
『白銀の墟 玄の月(一)~(四)』についていえば、仁義礼智信に徹して惑うことのない李斎には圧倒され泣かされたが、奇跡を起こす力を失い、無力な存在となりながらも、ただひたすらに民のために尽くそうとする泰麒の姿は遠藤周作の描くイエスのようでもあり、また一時は民に愛され、熱烈に支持されつつも、その後は一転して、民に誤解され、憎まれ、罪無くして裁かれようとする驍宗もイエス的な側面を持っているようであったのが印象的だった。
著者とキリスト教の関係についてはよく分からないが、検索してみたところでは、『ナルニア国物語』『小公子』の影響は受けているようだし、この辺りが本作にキリスト教的な要素を付加し、深味を与えているのかもしれない。