*概要
本書は、宗教をテーマにしたインタビュー集である。インタビューを受けているのは、高村薫、小林よしのり、小川洋子、立花隆、荒木経惟、高橋惠子、龍村仁、細江英公、想田和弘、水木しげる。
*金光教
個人的には、本書に収録されたインタビューの中で、もっとも情緒を刺激されたのは小川洋子のものだった。まず第一には、小川洋子の信じている金光教の「お取次」のやさしさである。「お取次」では信者の話を神様に伝えてくれるらしいのだが、その際はああだこうだとお説教をしないで黙って話を聞いてくれるらしい。これは信者からしたら有り難いだろうと思う。
金光教は布教活動に積極的ではないという話も興味深かった。その理由は、「世界にはキリスト教が必要な人も、ユダヤ教が必要な人も、イスラームが必要な人もいる」「金光教が必要な人は向こうから来るという考え方」をしているからだというが、これは神を信じ、人を信じているからこそなのだろうと思う。
*宗教を信じてるなんて…
他に刺激を受けたことはといえば、知的方面では、高村薫と立花隆の話が愉快だった。
まず高村薫がいうには「宇宙のすべての存在というのは、目に見えないごく小さな素粒子が永遠に運動を続けている」「死んで灰になっても消えたわけではなくて、素粒子はどこか別のところに移動して、また消滅を繰り返す。これが私の中では仏教の「空・縁起」の世界にものすごく近いんです」とのことである。ものの材料となるものが何らかの法則によって離合、集散、構成、分解ということを繰り返しているというのはよく分かる。
立花隆の話では、宇宙全体のうち、光で認識できるのは4パーセント(望遠鏡で分かるのはその半分)、あとは光で認識できない暗黒物質23パーセント、暗黒エネルギー73パーセントだという。さらにこういうことに関心がある立場からすると、「宗教を信じてるなんていうのはばかみたい(笑)」なのだそうだ。これはさすがに言い過ぎではないかとは思うが、心の癒やしを求めるならともかく、世界を理解するためには宗教より科学の方がよく、これを反対に考えるのはどうかしているというのなら理解できなくもない。