『知的生活を求めて』渡部昇一著

*概要
 本書の前半は、体が弱い著者がいかにして健康を保ちつつ知的生活を送ってきたかが語られ、後半はもっぱら健康法について語られている。その中では下痢対策はいかにも効果はありそうである。興味のある方は本書で直接確認することをおすすめしたい。


*肉食肯定
 本書では宗教に関連した話題もあり、その中で興味深かったのは肉食に関しての話だった。
 著者は元々は肉は食べられない質だったが、大学に入って神父の話を聞き、人間には魂はあるが動物はそうではないと確信し、その後は肉を食べられるようになったという。この確信と行動を一致させるために一度だけ蛙を踏み潰してみたこともあったそうだ。
 また、霊媒師が死んだペット(犬)の霊を呼び出すことができなかったことも動物には霊魂はないことを確信する遠因になったともいう。人霊を呼び出すことができる霊媒師であっても、もとから存在しない動物霊は呼び出せないのだと。
 これらは自分には理解し難い考え方ではあるが、著者のようにはっきり割り切ることができるなら余計なストレスはなくなるだろうし結構なことではあるかもしれない。


*蓄積効果
 知的生活についての話では、勉強の遅れていた者が地道な努力を重ねるうちに急に周囲が目を瞠るような実績を上げはじめただとか、クラシック音楽のよさが理解できなかった著者が、クラシックを聴き続けるうちにある日突然クラシックに感動できるようになったというように蓄積効果に触れた箇所は実に興味深かった。
 努力は必ず報われるとは限らないことは承知しているが、それでも自分のように天分に恵まれない者にとっては努力が報われた話は愉快なものである。こういう希望を持てる明るい話はいつ読んでもいいものだ。渡部昇一の著作は、ただ読むだけで前向きな気持にさせてくれるのでありがたい。