ダーウィン著、夏目大訳、『超訳 種の起源』

*読みやすい本
 著者の言葉によれば、本書はダーウィンの『種の起源』を「できるかぎり内容を損なわないよう、簡潔にわかりやすく書き直した本」(p.8)とのことである。
 そのわかりやすさはどの程度かというと、『種の起源』を数ページで挫折して完読できなかった自分でも、すいすい読めるくらいである。おかげで最後まで楽しく読めた。これほど読みやすく面白い進化についての本と出会えたのは、ドーキンスの『進化とは何か』以来である。


*自然選択と変化の速度
 個人的には本書の中でもっとも刺激を受けたのは、次の箇所だった。
自然選択は、生物に多様性をもたらす一方で、生物の多様化を抑制するはたらきもしている。

(『超訳 種の起源』ダーウィン著、夏目大訳、技術評論社、2019年、p.82) 
自然界の生物に、飼育栽培されているものほど急激な変化が生じないのはなぜか。それは、個体差の多くが、自然界では、生存にとって不利になるからである。

(同上、p.81)
 自然選択は進化を生じさせ、促進するというイメージがあったけれども、これは言われてみれば、なるほどその通りだ。こんな風に自力ではとても思いつけなかったことを教えてもらえるのは有難い。本を読んだり、人の意見を聞くと、こういうことがあるから実に楽しい。