『安岡正篤「こころ」に書き写す言葉』安岡正篤著

*概略
 「はじめに」によると、本書は、名言集としてまとめられ、好評を得た小冊子『天籟の妙音』に新たな内容を加えたものであるという。
 目次を見ると、安岡正篤の言葉は、以下のテーマ別に整理されている。自己修養、人生の知恵、日々の心得、「人望」という財産、成功する人、心と体の養生、人間の品格、学び続ける人生…と。
 

*熏習
 名言集であれば気が向いた時にでも、つまみ読みしたらいいだろうという軽い気分でいたのだが、本書を開いてみると、膝を打ちたくなったり、思わす背筋を伸ばしたくなるような言葉が並んでいた。
 心に書き写したいと感じた言葉のいくつかを、ここにメモしておきたい。
我々は、何のために学ぶのか。何のためでもない。学ばなければならないから学ぶのだ。学ばずにはいられないから学ぶのだ。学問の第一義は、道心の長養でなければならぬ、道徳の発揮でなければならぬ。

(『安岡正篤「こころ」に書き写す言葉』安岡正篤著、三笠書房、2007年、p.202)
我々は学んで初めてその足らざるを知り、教えて初めて到らざるを知る。そこで自ら反り、強めるのだ。

(同上、p.196)
中国の最も突きつめた哲学では、人間の意識の内にあるようでは駄目で、いわゆる無意識、無でなければならん。人にほめられるようではまだまだ駄目で、人が気付かないくらい偉くならなければいかん。こういうのが理想なのだ。

(同上、p.165)
何でもこつこつ根気よく努力を続けてゆくと、たとえ愚でも、それはそれなりに味が出てくるもので、俄造りはどんなに器用に見えても、必ず駄目になるものだ。

(同上、p.25)
 自分にとって、本書の言葉は自らの至らなさを思い知らせつつも、もっと頑張ろうという前向きな気持ちにさせてくれる本である。これなら多くの人々が本書の刊行を希望したというのも納得である。