『「孝経」人生をひらく心得』伊與田覺著

*まえおき
 古典名著はできるだけ目を通しておきたいと思いつつ、「孝経」はその書名はよく聞くにもかかわらず、一度も通読していなかったので、本文紹介とともにわかり易く解説してある本書を読んでみた。
 恥ずかしい話であるが、「身体髪膚、之を父母に受く、敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり」という言葉は前々から知ってはいたが、これが孝経の言葉だとは本書を読んではじめて知った。古典を読むと、有名な名言名句を再発見できるところは楽しい。


*心に残った言葉
 ちなみに、本書中で特に心に残ったのは、この言葉だった。
 「故に其の親を愛せずして他人を愛する者、之を悖徳と謂う」。
 自分の親を愛さないで他人を愛する者を悖徳という。
 「其の」というのは「自分の」。「悖」は「悖る」で、正しいあり方に反する。徳に悖る者を「悖徳漢」といったりします。自分の親を疎かにして他人を愛するような人は悖徳漢ですね。

(『「孝経」人生をひらく心得』伊與田覺著、致知出版社、平成21年、pp.135-136)
 毒親問題が広く認知されるようになっている現代では、どんなに人に親切にしたとしても、親孝行ができていなければ悖徳漢だとはなかなかに厳しく、暴論とも思えるのではあるが、一般論としては親不孝な状態ではいくら他人に親切にしても、おそらくは心の中から罪悪感は消せなかろうし、それならこの考え方はそう見当違いというわけでもなく、完全に否定されるものではないのだろうと思う。